研究概要 |
平成23年9月11日~23日にロサンゼルスのゲッティ研究所図書館にて「David Tudor Papers」の調査をひきつづきおこなった。今回、閲覧調査した資料は、1)電子音響制作家としてのチューダーと、他の音楽家や舞踏家、美術家などとのコラボレーションによる作品(《Brazos River》《Rainforest IV》《lsland Eye, Island Ear》等)に関する企画書、書簡、2)Cage,Stockhausen,Nilsson,Kagel等の不確定性や偶然性をとりいれた作品の楽譜および演奏のためのメモ類、3)Pauline Oliverosほかの書簡、である。これまでの調査を踏まえ、特に興味深いと思われる「コラボレーション」「楽譜のリアリゼーション」「西海岸の音楽家との関係」に対応する資料を集中的に収集した。これらの資料から得られた情報は整理し、20年度より構築しているデータベースに加えた。4年間の資料収集の成果として、現在、約3000件の情報がデータベースに登録されている。これらの情報は今後、精査・分析の必要があるが、チューダーの活動全体をカバーする大量の情報を含むチューダー研究の重要な基盤を構築することができた。 これまでに収集しデータベース化した資料のうち、チューダーの書いた書簡および書簡草稿は全部で138点であるが、このなかからチューダーの音楽観や人物像を理解する手がかりとして有効であると思われる42点の抄訳を『福井大学教育地域科学部紀要』に公表した。チューダーは文筆活動をほとんど行っていないため、親しい友人等への日常的な連絡のなかに含まれる彼のなまの言葉は、チューダーという音楽家を理解するための貴重な手がかりとなる。とくに、シュトックハウゼンとの交流、シュタイナー思想への関心、ダルムシュタットとの関係について、これらの書簡を通して具体的に把握することができた。
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