本研究課題は、20世紀後半を代表する作曲家の一人、ジェルジ・リゲティ(1923-2006年)について、その創作を彼の文化的背景である中東欧音楽の文脈のなかで明らかにしようとするものである。具体的には、(1)幼少期から学生時代にかけてのリゲティの音楽的環境を明らかにし、そこでの民俗音楽の役割などを検討すること、(2)第二次大戦後の「前衛音楽」のサークルにおけるリゲティの位置を、ブレーズやシュトックハウゼンを参照軸としながら明確にすること、(3)リゲティ自身の「ヨーロッパ音楽」理解を彼の著作や音楽作品の分析によって明らかにすること、を目指す。そして、最終的にこれらを総合する論点として(4)リゲティ唯一のオペラ《ル・グラン・マカーブル》を中心とする彼の諸作品を、中東欧音楽の視点から解釈することで、これまでとは次元の異なる作品理解を導く、というのが本課題の目的である。
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