平成21年度は、主として帝政末期からソ連時代の状況に関して、「帝政末期の文化政策の転換」、「グリーンカのオペラ《皇帝に捧げた命》の《イヴァン・スサーニン》への改作」、「ソ連国歌の成立過程」、「未完に終わった国歌プロジェクト」などをテーマに資料収集を行った。特に、平成22年3月11日から3月20日にかけては、ロシア連邦モスクワ市に滞在し、ロシア国立文学・芸術文書館(RGALI)、ロシア国立図書館、ロシア国立公共歴史図書館などで資料収集に努めた。中でも、ロシア国立文学・芸術文書館においては、グリーンカのオペラ《皇帝に捧げた命》の1930年代における復活の途上のプロセスに関し、クルシェニンニコフやゴロデーツキイらの文書を閲覧、また第二次世界大戦直後のロシア社会主義連邦共和国における国歌創作プロジェクトに関し、ソ連邦閣僚会議付属芸術問題委員会の文書などを閲覧し、知見を深めた。クルシェニンニコフは1920年代より《皇帝に捧げた命》の台本改訂に取り組んだ先駆者だが、1930年代末の上演に当たっては関わることを認められなかった。また、ほとんど文献のない戦争直後のロシア社会主義共和国連邦における国歌創作プロジェクトについては貴重な機会となった。22年度以降、以上のテーマについて順次、論稿を発表していく予定である。また、平成21年7月9日には、青山学院女子短期大学の研究会プロジェクト「革命・改革・改良の比較研究-フランスとロシアの革命から知と情報の革命まで-」において、関連テーマで講演した。
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