研究課題
本研究の目的は旧制の第一高等学校の音楽文化活動を軸に、高等教育、特に教養教育における音楽教育の内容と意義を探求することである。2年目は研究計画に従い、時代を明治から大正時代へと進め、大正元年から大正15年までの第一高等学校の(1)寮歌105曲の楽曲分析を行い、楽曲の西洋化の過程を明らかにし、(2)寮歌を作曲した学生で後にプロの音楽家になった者(箕作秋吉)と当時音楽部の顧問であった音楽家(弘田龍太郎)の経歴や活動を調べ、一高の音楽活動全般との関わりを考察し、(3)寮歌と音楽部に関する記述を文献資料から調べ、当時の演奏会の演目や、参加した学生や音楽家と、寮歌との関係を考察した。さらに(4)口伝で歌い継がれている寮歌の記録である寮歌集の変遷に注目して考察を行い、松本の旧制高校記念館に初版本の取材に行った。また昨年度の明治時代の研究成果の発展として、一高の寮歌活動の基礎を築いた鈴木米次郎を軸に、日中の音楽文化交流という視点から、蕭友梅について調べた。蕭友梅は日本に留学して西洋音楽の勉強を始め、後に中国初の音楽院を蔡元培と共に創始した人物である。彼らの活動を通して20世紀初頭の中国で、西洋音楽の受容の在り方や、高等教育における音楽教育がどのように始められたのか、また如何なる教育理念の基に始められたのかを探求した。研究発表は国際学会で1回、論文は2本(英語1、日本語1)を執筆した。5月に東慶寺で行われた向陵塚例祀と、10月に同窓会主催(一高玉杯会)による秋の寮歌祭に参加し、寮歌の実演を録画によりデータとして記録した。これらの取材活動を通じて、卒業生、寮歌愛好家、在野の研究者の方々との情報交換を行った。
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APSMER 2009 7^<th> Asia-Pacific symposium on Music Education Research ISME Asia-Pacific regional Conference 2009
ページ: 422-435
東京音楽大学研究紀要 第33集
ページ: 23-41