本年度は、電子音色辞書のシステム構成を拡張した。具体的には、これまでサーバクライアントシステムとして構築し、音データベースはサーバ側に、また操作はクライアント側のweb browser上に動作させていたが、この機能とは別に、ユーザが単独でアプリを使えるように、デスクトップアプリケーション(スタンドアロン)システムとしても構築した。これにより、個人ユーザが、制作中の音データを自身の装置上に格納しつつコンテンツを制作でき、サーバへの登録を意識してもしなくともいずれも可能する方法が確立した。従来、音を粒子化して表示するGUI(グラフィカルユーザインタフェース)などはサーバ側の機能としていたが、この改良により、クライアント側に移り、多くのユーザが利用するシステムの全体としては軽い動作とすることができた。この様子を音楽情報科学研究会でデモした。 また、本研究の問題設定そのものがまだ浸透していないため、WOCMATやIRCAMでデモや招待講演を行い、電子音色辞書の広報を行った。これによりコンピュータ音楽のコミュニティーに大いに宣伝となった。また、システム構築とは別に、環境音のテキスト化がこれまで進展が遅かったため、こちらのデータ収集とその解析方法の確立に力を入れた。データ収集ではオランダ語、イタリア語などの外国語無意味単語の聞こえの記述実験を実施した。被験者にはIPAが記述できる人によるIPAの特性と擬音語としての日本語文字記述の2種類を準備した。またデータ解析は文字列間の距離、文字列群の平均と分散などを数量化する手法を確立した。
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