本研究の目的は、1)昭和初期の家庭で享受された豊穣な映像文化の様相を明らかにするとともに、2)京都における映像文化アーカイヴの一端に、現代の映像文化の原点ともいえるホーム・ムービーの受容様相を加えるべく、3)小型映画フィルムの保存および復元方法の提案・実践を行い、4)今後の小型映画文化アーカイヴの基礎を築くことにある。 本年度は、昨年度の調査実績と当初申請時の計画に基づき、「1.媒体変換による映像情報の複製方法、2.作品内容と評価に関する文化的調査」の研究計画をたてた。しかしながら、一定量の媒体変換をするには予算的に不足しており、他方で文献資料収集の必要性もあったことから、戦前の小型映画雑誌およびカメラを購入し、調査は「作品内容と評価に関する文化的調査(海外含む)」に絞った。具体的な調査対象は、New York Public LibraryでのAmateur movie誌調査、George Eastman Houseでの日本を題材にした小型映画作品の視聴を実施した。 これらの調査により、戦前・戦時中の日本とアメリカに於ける小型映画文化の比較に加えて、アメリカでの戦前日本アマチュア映画の受容、アメリカのアマチュア映画誌に描かれた日本小型映画文化・映画人のイメージを明らかにした。当該の研究成果は、論文「戦前小型映画誌Movie Makers にみるアメリカの日本イメージ」(『アート・リサーチ』13号、2013年3月、37-48)や、映像アーカイブに関する授業で公表し、シンポジウムでの発表「帝国日本のアマチュア映画文化 朝鮮での展開」(「植民地期の韓国映画と日本映画の交流について」、立命館大学創思館、2012年3月2日)においても言及した。
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