研究概要 |
三重県立図書館には、作家田村泰次郎に関する資料が9,000点保存されている。これらはみな、田村泰次郎が亡くなった後、平成5年に妻・美好氏から三重県立図書館に寄贈されたものである。三重県立図書館所蔵の田村泰次郎文庫に関しては、すでに『田村泰次郎文庫資料目録』が同館司書よって作成されている。段ボール箱153箱に収められて寄贈された資料の内訳は、特別資料2589点と図書資料5514点である。現在、その3分の2に当たる点数に目を通し、それらの内容を確認して転記した。今年度の研究によって資料の全体像がようやく見通せるようになった。 他方、四日市市立博物館には、平成17年に逝去した丹羽文雄の資料が孫・丹羽多聞氏から寄贈され、平成19年に丹羽文雄念室が設けられた。四日市市立博物館にある丹羽文雄資料にもとづいて、『丹羽文雄文芸事典』(半田美永皇學館大学教授・秦昌弘四日市市立博物館学芸員編、和泉書院)を製作している。丹羽文雄に関する伝記的事項をはじめ、書誌、作品紹介、テーマ分析などの各項目を、三重県内の研究者が分担執筆した。「丹羽文雄と戦争」という重要項目の論文を担当し、そのテーマに関して実証的な方法で論述した。同書はまもなく刊行予定である。 以上、本研究テーマでの作業は、当初目標とした全体の3分の2が終了したと考えられる。 他方、丹羽文雄および田村泰次郎の個別作家研究を深めるために、年2回の定期研究会を開催し、三重県内外の研究者と議論を積み重ね、本研究に関する報告書の作成準備を進めたい。
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