後期読本史の全体像を把握するためには、文5、6年(1808、09)頃の、江戸読本の隆盛とそれによる江戸・上方読本間の作風の融合以前に位置する、享和~文化初年(1800~05 年頃)の上方読本の実態の解明が不可欠である。これに該当する作の多くは、実録を種本としており、その影響関係を明らかにする必要がある。既に従来の研究(2005~07 年度・基盤研究(C))に基づき、京都の作者・速水春暁斎の読本に独自の記述体が存すること、それを踏襲する方法が、栗杖亭鬼卵など、文化期後半以降の作者の読本にも見出されるとの結論を予測し得ているので、このことを、各作者各作品に即して検証しようとする。
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