本年度は朝鮮戦争期の文学および社会表象にかんする基盤的資料の調査・分析を行った。(1)国内における朝鮮戦争関連資料の調査・収集では、総合雑誌・文芸雑誌を中心に朝鮮戦争報道を調査し、メディア別の報道の特徴やその偏りを分析した。また、文学作品については初出・初版本を中心に調査し、書評など関連資料とともに同時代資料の整理に努めた。この時期はGHQ占領下の影響ということもあり、朝鮮戦争の表象は敗戦後の崩壊した都市像と特需による経済復興の断片的な記述が特徴となる。(2)韓国での海外資料調査では、国会図書館・国立中央図書館・戦争記念館などを中心に実地調査を行った。特に朝鮮戦争休戦後における朝鮮戦争の位置づけにかんする資料を多く収集でき、整理・分析を開始している。(3)本年度の成果としては、(1)にかんする作品論として「堀田善衛『孤独の広場』の射程-朝鮮戦争と同時代文学」(日本文学研究会十一届年会及学術研究会、2008.8.19、中華人民共和国・大連市大連外国語学院)と題する口頭発表を行った。これについては2009年度中に学術論文としてまとめる予定である。これらの成果を踏まえ、(4)1950年前後の国民文学論争や平和問題談話会の活動、在日コリアン文学の動向や北九州地域の地方史など朝鮮戦争の影響が強いと思われる重要な細目テーマについても資料調査・分析を進めている。
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