平成21年度の研究内容とその成果は次のとおりである。まず平成20年度の成果をもとに朝鮮戦争関連資料の調査および収集を実施した。また国内外における朝鮮戦争研究関連文献の調査収集にかんしても、特に国内・韓国の文献を中心に継続して行っている。韓国文献については、昨年度の朝鮮戦争研究関連文献から得た情報の追跡調査を韓国にて実施し、特に韓国文学研究における朝鮮戦争関連文献を中心に調査した。この研究成果については重要性の高いものも含まれているので、書誌としてまとめるだけではなく、平成異22年度以降に別途学術論文として公表する予定である。 次に平成21年度の研究成果としては、これまでの調査結果をもとにして学術論文「堀田善衞『広場の孤独』の射程-朝鮮戦争と同時代の日本文学」を執筆し『韓国語と文化』第7輯に掲載した。これは平成20年度に中国日本文学研究会十一届年会及学術研究会(2008年8月19日)で行った口頭発表をもとに追加調査を経て活字化したもので、1950年に勃発した朝鮮戦争がGHQ/SCAP占領下の日本の文学界にどのように認識されていたのかを堀田善衞『広場の孤独』(1951)を中心に論じたものである。また「原爆の記憶と朝鮮戦争-1950年広島における反戦平和詩のダイアグラム」と題した口頭発表を第30回原爆文学研究会(2010年3月21日)にて行った。この発表は1950年の『われらの詩』や『反戦詩歌集』を中心に朝鮮戦争の勃発が広島の原爆詩にどのような変容をもたらすのかを論じたものである。これについては平成22年度中に学術論文として公表する予定である。
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