平成22年度はこれまでの研究の総括および新たな研究課題への接続を意識しながら研究に取り組んだ。朝鮮戦争関連資料の調査・収集では、新聞・雑誌を中心に戦争報道の推移やその特徴を分析した。文学テクストについては朝鮮戦争下の社会的文脈との関連から分析を行った。朝鮮戦争の表象は敗戦後の崩壊した都市像と特需による経済復興の断片的な記述が特徴となるが、たとえばそれは広島や長崎では敗戦・反戦思想やそのイデオロギー的特徴も顕著に表れており、アジア太平洋戦争の記憶を想起する言説と地続きである。こうした地域的な特徴は、1950年前後の国民文学論争や平和問題談話会の活動と連関するものの、このような地方紙誌での広がりは独自なものとして捉えられる。本年度の成果としては、年度内発表には至らなかったものの、平成23年度中に学術論文として公表予定である。
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