本件急の成果は、なによりもまず、2010年12月に刊行した『沖縄を聞く』(みすず書房)に収められた諸論考において明らかにされている。特に、本研究において展開された、戦後沖縄文学に見出せる、男性性の脆弱性、そして「沖縄の男」をめぐるホモソーシャルな欲望とホモセクシュアリティの否認といった観点は、戦後沖縄文学研究の新しい地平を開いた。戦後沖縄文学に見出せるホモソーシャルな欲望という視点から、沖縄という媒介を棄却しつつ成立する日米軍事同盟という「絆」の政治的力学を明らかにし、戦後沖縄文学におけるジェンダー表象分析と独自性と可能性を明証した点に、本研究の最も重要に成果がある。
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