平成22年度は、写頁・書簡類のリスト作成を継続する一方で、小牧近江の仏領インドシナ(ベトナム・ラオス・カンボジア)・ハノイ在住時代(1939年~1946年)の状況について調査を進めた。 まず、仏領インドシナ史の概略を捉えた上で、この時期の小牧の詳細な年譜を作成した。その際、新規寄託資料によって、小牧が日本文化会館に就職したのが1944年ではなく1943年11月1日であったこと、またハノイ事務所長となったのが1944年ではなく1945年6月5日であったこと等、多くの新事実が判明した。 また、寄託資料にあった「あの日のハノイ」(1965年4月22日付「朝日新聞」)等のスクラップ、遺族・親族の証言、および先行研究の整理により、ベトナムの人月革命の状況や小牧の対応、ベトナム人との交情の様子等を明らかにすることができた。 こうした作業をした上で、2月13日から約一週間の日程でベトナムにおいて現地調査を行った。フランス大使館の協力を得た結果、勤務先である印度支那産業、日本文化会館、そして小牧の住居等を特定することができた。さらに、小牧と親交のあったベトナム共和国初代大統領ゴ・ディン・ジェムに対する評価が現地で高まりつつあることも実感した。 以上の成果は、秋田風土文学会における研究発表「小牧近江と終戦」、日本文学同好会における講演「小牧近江と仏領インドシナ」、共編著『改訂秋田-ふるさとの文学』(無明舎出版)に反映させた。
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