平成23年度は、写真・書簡類の調査およびリスト作成を継続する一方で、小牧近江の著書・スクラップ・書簡と評論家で仏文学者の小松清の半自伝小説『ヴェトナムの血』(河出書房、一九五四年七月二五日)、仏領インドシナ史関係資料との照合作業を通じて、1945年前後のベトナムの状況や仏越和平交渉の実際について考察した。その結果、小牧近江が、華僑、グェン・ツンタム(院祥三)のような中国亡命派の大物等との人脈を背景にしつつ、フランス人とベトナム人の双方と信頼関係を築いていた日本人という独自な立場から仏越の関係を結ぶべく奔走したことが明らかとなった。 以上の成果を、雑誌論文「ハノイにのこせ人のあと-小牧近江と小松清-」(『秋田文学』第4次第20号)、「東北とプロレタリア文学-秋田県の場合を例として-」(『文学と格差社会-樋口一葉から中上健次まで』)、「小牧近江書簡資料の実際」(『社会文学』第35号)「小牧近江と仏越和平交渉-交錯するフランス・ベトナム・中国-」「小牧近江寄託資料の意義」、および学会発表「小牧近江と仏越和平交渉-交錯するフランス・ベトナム・中国-」(日本社会文学会秋季北京大会/中国社会科学院日本研究所学術シンポジウム)、「小牧近江寄託資料の意義」(『種蒔く人』創刊90周年記念事業)に反映させ、ベトナムの独立と平和のために力を尽くした小牧近江の存在意義を主張した。
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