本研究の目的は、雑誌「種蒔く人」の創刊者として近代史にその名を刻まれている小牧近江の全体像を、遺族(小牧の孫・桐山香苗氏、鎌倉市在住)から新たに秋田県に寄託された資料群によって明らかにすることである。 膨大な新資料の整理・分析を通じて、フランスにおける思想形成のプロセス、パリ講和会議で果たした役割、仏領インドシナ(ベトナム・ラオス・カンボジア)における活躍といった小牧の国際性の具体的な相を明確にする。また、戦後の交友関係や私生活等について、自著で述べていることを裏付けると同時に、新たな事実の発見に努める。 国際人、思想家、労働運動家、文学者、研究者、教育者等、多くの顔を持つ小牧近江の存在意義を問う行為は、近現代文学史を補うことを意味するのみならず、日本、フランス、仏領インドシナの近現代史の一角を検証することともなるだろう。その点も遠望しつつ、本研究を進めてゆく。
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