研究課題/領域番号 |
20520173
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研究機関 | 駿河台大学 |
研究代表者 |
吉野 瑞恵 駿河台大学, 現代文化学部, 教授 (00224121)
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研究分担者 |
菅 聡子 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 教授 (70224871)
松井 優子 駿河台大学, 現代文化学部, 教授 (70265445)
増田 久美子 駿河台大学, 現代文化学部, 准教授 (80337617)
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キーワード | 日本文学 / 比較文学 / 日記文学 / 書簡文学 / 公的領域 |
研究概要 |
本研究は、古代から近代に至る日本の女性作家による日記・書簡文学の持つ「公的」な性格に注目し、女性が「書く」ことと、公的領域の形成・拡大との関わりを、英語圏文学研究で近年注目されているlife-writingという概念を援用しながら、英米その他の女性作家の日記・書簡文学との比較も交えて明らかにすることを目的としている。 本年度は二度にわたって研究会を開催し、時代の異なる二つの女性作家による日記を和歌という観点から分析することを試みた。 8月に開催した研究会では、樋口一葉日記の表現分析を通して、この時代の女性作家の日記において公/私領域についての認識がどのように形成されているか、とくに国家情勢とのかかわりの中で言説が形成されているありようが検証された。 さらに2月に開催した研究会では、中世日本の宮廷女性の自伝である『とはずがたり』の執筆意図に焦点をあてた発表がなされ、宮廷の秘事を描いたというこの作品が、実生活を題材にしつつ明確な創作意識をもって書かれていること、さらに作中に書き記された和歌が公的領域への回路となっていることが検証された。 樋口一葉日記と『とはずがたり』という時代が隔たった二つの作品の双方において、和歌が重要な役割を果たしているが、前者においては和歌がナショナリズムの言説を形成していくものとして、後者においては、和歌を書き記すということが、当時の女性にとって公的領域に参入する手段であったことが明らかになった。
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