本年度は『新編古今事文類聚』の朝鮮甲辰字刊本の伝本調査を中心に研究を行った。具体的には、大韓民国ソウル特別市の高麗大学校中央図書館・延世大学校中央図書館に出張し、25部113冊の調査を行なって、金点の要所につき、ディジタル画像の入手を果たした。その他、国内外で同種活字を使用した朝鮮刊本の調査を進め、一本の精確な把握に努めた。この結果、依然として全体像のわからない首巻は別にすると、221巻中189巻の内容と版式、張数を確かめることができた。また元来、甲辰字には大字を欠き、本書標目に用いる大字は、朝鮮成宗24年(1493)に鋳造した癸丑字を混植したものであり、従ってその刊行は、成宗24年以降に下がることが知られた。残り32巻の調査と本文異同の細情の調査が、今後の課題となる。その他、内外の図書館文庫において、同書日本寛文6年覆明刊本、日本延宝5年刊略本の伝本調査を実施した。後者は「事類全書」と題し、前者より略出した版本であるが、遺集の末に延宝5年の石橋源兵衛の刊記を有し、慶應義塾図書館蔵本が遺集の次に存する雑集およびその末尾、延宝6年紀伊国屋源兵衛(同人)刊記を欠く形の早印本を存することが判明し、間々両者は別版と著録されるが、同版種と確認された。 また本年度には、中国国家図書館の収蔵する『新編古今事文類聚』元泰定2年刊本10函66冊、上海図書館の蔵する『新編方輿勝覧』宋末刊本4函20冊、陽明文庫の蔵する同元初覆宋末刊本2部55冊の複製を入手し、両書目について、版本研究を展開するための支柱を得た。
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