本研究では、日本の中世期以降に常用された宋末の編集者祝穆制作の書物に注目し、日本および周辺地域に波及する過程を、版本研究の方法によって明らかにした。 その結果、日本における祝穆編書の受容は、『方輿勝覧』と『事文類聚』を中心とし、中世には五山周辺における宋元版の使用に限られたことが判明した。その後『方輿勝覧』は、後続の同類書に交代し、その複製が低調となったのに対し、『事文類聚』は、朝鮮や日本で流行して、近世初に朝鮮本由来の古活字本が、江戸前期には複数の明版を校合した和刻本が派生、菊池耕齋の附訓を伴う版本や、抄出された版本が、近世の学者の需要に応じ、広く行われた。
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