平家物語には数多くの異本があり、諸本の分類や系統について多くの研究がなされてきた。その中でも延慶本が最も古い形態を伝えるという水原一の説が現在有力視されている。長門本は延慶本とは共通する本文が多く、両本はきわめて近い関係にあると目されているが、長門本の研究は延慶本ほど詳しくは進められていない。延慶本と長門本を子細に比較検討すると、長門本の本文の方が延慶本よりも古いと認められる部分もあって、延慶本古態説にも再考の余地がある。 本研究では長門本研究の基礎を築くために、以下4項目を主たる目標としている。 (1)『長門本平家物語自立語索引』の作成(平成20年度に完成) (2)『平家物語長門本延慶本対照本文』の作成(平成22年度に完成) (3)長門本の成立年代を明らかにする研究(一部、論文により発表) (4)長門本と延慶本との成立上の関係を明らかにする研究(平成23年度の課題) (1)は長門本の自立語検索を可能とする資料の作成、(2)は長門本と延慶本の成立関係を研究する基礎資料の作成、(3)は日本語史的な観点から長門本の成立時期を明らかにする研究、(4)は本研究の最終目標である。 このほか、平家物語の風評に関する研究にも取り組んでいる。
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