本研究は、あらゆる職業や立場で西洋に渡った日本人たちの西洋紀行文・西洋案内記を対象に、その西洋に対する視線を探究することを目的とする。「留学」や「視察」とは別に、「観光」という新たな他国訪問の型の創出が、日本人の西洋移入について、重要な一面を担うものと推察される中で、この「観光」という型の性格を強く持つ特徴的な例として、都市国家であり、訪れるべき古代ローマ以来のさまざまな文化遺産を持つイタリアを対象としている。本年度においては、日本の近代、具体的には、1860年から1945年の間に書籍として出版されたイタリア旅行記を含む書籍の現物所在を図書館等において確認し、その中から、イタリア関係記事を収集することから始めた。それらを、西洋紀行文・西洋案内記関係書籍一覧としてデータベース化し、イタリア関係記事の頁については、PDFファイル化をも進めた。 さらに、イタリアのローマおよびその近郊における、日本人旅行者の足跡を探った。その際、イタリア東方学研究所所長のシルヴィオ・ヴィータ氏に現地での案内を請い、また、ローマの観光地の特徴について、さまざまな情報の提供を受けた。 これらを通して、日本人旅行者のイタリア訪問記の特徴を論文化する作業をも、並行して始めている。本年度は、文学者の表現と女性の視線について論考を公表した。また「イタリア「観光」の性格とホテル--イタリア旅行関係記事のPDFファイル化を通じて--」と題して口頭発表を行った(シンポジウム「海外における日本文学の時空間--比較文化研究とデジタル・ヒューマニティーズ--」、2009年3月14日、於立命館大学)。
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