研究概要 |
歌題集成書は、その史料性の高さが指摘されながら十分に活用しうるだけの本文整備が進んでいない作品群で、包括的な研究の進展が嘱望されている。本研究は、歌題集成書と、これまで未整理のままになっている歌題集成書の一部や類題集の題のみを抜書した歌題を列記した史料類(以下、「歌題集成史料類」とする)を対象とする。その研究目的は「歌題集成書類相互の関係の解明」「各歌題集成書の組成、取材源の解明」「各歌題集成書の諸本分類」「各歌題集成史料の位置づけ」にあり、歌題集成書が近世にいかに展開していくかを考察するための足がかりを得ようとするものである。また未公刊の史料については研究に資する形で学界に提供することを目指す。 初年度は、既に活字化されている『明題部類抄』『類題鈔』に加え、『明題古今抄』『和歌組題集』『増補和歌明題部類』と歌題集成史料類の複写を入手、または披見し、本文をデータ化する等して研究基盤を整えることに努めた。『明題古今抄』については、平成21年6月刊行の『神戸女学院大学論集』第56巻第1号に井上本の翻刻を掲載予定である。同書については、陽明本、書陵部本との比較検討もおこなったが、その過程で、外題を『和歌題林抄』とする書陵部本が歌題集成書として注目すべき形態であることが窺われた。今後、さらに考察を深める。また『和歌組題集』(板本)の増補を除いた本文の成立が中世と考えられること等も明らかにしつつある。歌題集成史料類は、「十首題」(青山会文庫・384)、「類題恋雑」(祐徳稲荷神社・74,M)等について、検討を加えた。これらの歌題集成史料類については、個別に歌題集成書や類題集との関係を探り、史料としての明確な位置づけをおこなうべく、研究を進行中である。
|