研究計画最終年度にあたる本年度は、これまでにおこなってきた歌題集成資料類の整理と分析を総合的に実施した。前年度からの継続課題となった国立歴史民俗博物館蔵『組題集成』2冊(1249-ミ函57)については内容を吟味し、2冊の内、特に(1)についてはその詳細を明らかにした(「11.研究発表」項参照)。 また前年度に翻刻本文を公表した『明題古今抄』については、成立時期、構成・内容、資料的価値といった面から考察を進め、主として室町後期の組題を集成したものであり、従来の同期の和歌事蹟を補う内容を有する書であることを確認した。具体的に述べると、現存三本を精査し、国立歴史民俗博物館蔵『組題集成』(2)(外題『百首組題抜書』、1249-ミ函57・2)等に残された校合注記と照合した結果、三本が共通するのは前半部分のみであり、本文の成長過程が書陵部本から陽明本・井上本の形態に至るものであることや、増補部分と考えるべき後半部分は陽明本だけに現存し、書陵部本は上下二冊本ではないこと、その成立時期は大永三(一五二三)年三月晦日以降後柏原天皇在位期間中と考えられること等を明らかにした。詠作機会、出題者に関する注記から、同書は後花園院や飛鳥井家歌人による出題に重点を置いて収載したもので、飛鳥井家周辺資料がもととなって編まれたものと推測される。また『後花園院御集』・『紅塵灰集』との比較からは、集中の歌の詠作年次が特定される場合や、五十首・三十首の組題の全容及び出題者が明らかになる場合が指摘でき、同書が極めて高い資料性を有するものであることが確認できた。これについては、当該年度に成果を学会で公表し(「11.研究発表」項参照)、平成23年7月に発刊の学会誌に論文掲載の見込みである。 この他、『増補和歌明題部類』をはじめとする歌題集成書の入力データを、公刊を視野に入れて整備する等、3年間に集積した内容を今後の研究活動に生かせるよう、とりまとめに努めた。
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