平家物語がどのような過程を経て成立したのか、あるいはその初期形態がどのようなものであったのか、という根本的な問題を明らかにするために、現存の語り本系諸本の中で比較的古態を多く留めていると評価されてきた屋代本平家物語(国学院大学図書館蔵)とその周辺の諸本について、書誌学・日本語学・歴史学等の多面的な視点から調査研究した。本年度は、まず問題の所在を見極めるために、6月に、平家物語を歴史学の視点から研究されている3名の研究者(野口実・高橋典幸・佐伯真一)を招いて「平家物語研究の視点-歴史学の視点・文学の視点、その相互理解をめざして-」と題する公開シンポジウムを開催した。 また3月に、京都府立総合資料館所蔵の平家物語関連資料、ならびに大原周辺の平家物語関連史跡の調査を実施した。 最終年度にあたる本年は、それぞれの研究者がこれまでの研究成果をまとめて一書にまとめて公刊することにした。『平家物語の多角的研究-屋代本を拠点として-』(ひつじ書房、平成23年6月刊行予定)として公刊の予定である。
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