21年度は、『普通學校用假名遣法・普通學校用送假名法』(総督府発行、大正2)を手引きに、大韓帝国学部編纂『日語讀本』(8巻、光武11~隆煕2)、『普通學校學徒用日語讀本』(8巻、光武11~隆煕2)、朝鮮教科書I期『國語讀本』(8巻大1~大4)、II期『普通學校國語讀本』(8巻、大12~13)、III期『普通學校國語讀本』(12巻、昭5~昭10)、『四年制普通學校國語讀本』(8巻、昭8~昭9)について、その成立過程と朝鮮における近代国語表記法の分析、内容の主題分析等を試みたが、成立過程については、まだ多くの資料の探査が必要である。 国語表記については、仮名遣い表記を中心に記録してみたが、まだ研究途上である。また、釜山広域市立市民図書館には大正15年台湾総督府編纂国語読本があり、これによれば、朝鮮教育教科書に比して台湾教育教科書は口語音声表記主義の徹底さが顕著であることがわかる。植民地教育現場での仮名遣い表記の変遷を伺える好例だと思われる。また『朝鮮總督府編纂教科書概要』(大正6)『現行教科書編纂の方針』(大正10)や『国語教授法』(大正1)各科『教授法』『編纂趣意書』などとの照応を試みたが、資料の膨大さと研究時間的制約から期待できる作業は行えなかった。これについては、次年度研究でも行うこととする。 夏季は釜山広域市立市民図書館において、併合下朝鮮で刊行された和書を中心に複写を試みた。また、韓国で復刊された『京城日報』(1915.9~1918.12 21巻)を購入し、この間の朝鮮社会の動向について朝鮮内部の事情から多角的に知ることが出来たが、当該新聞からは当時についてのかなりの半島情報を得ることが出来る。 研究成果公開サイト「近代日本と韓国・朝鮮半島」(http://swjc.saga-wjc.ac.jp/~nagasawa/)において、これまで収集した朝鮮総督府教科書データベース、国立中央図書館蔵書目録データベース、及び教科書本文のテキスト化を行い、釜山市立市民図書館蔵書分については終了した。
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