1)本研究の開始から10年を経過しているため、韓国内で複写した資料のインクが消えつつある状況となった。そのため、平成23年度は「研究実施計画」に記載したとおり、消えつつある資料の復元、及びPDF化への作業を行った。韓国で複写した紙媒体は10年を経過すると文字が消えていくことが判明したため、これまで収集してきた資料を保存するという意味で重要な作業であった(まだこの作業は完了してはいない)。2)また、『京城日報』掲載記事からは、昭和14~15年に催された日朝からの若手文学者による3つの「座談会」に注目し、朝鮮教育の観点からこれを分析して「朝鮮教育下の朝鮮文学-転換期の朝鮮文学の動向とイロニー-」として口頭発表した。3)『普通学校修身書』の異同は、朝鮮版と国内版との異同も行う予定だったが、朝鮮版には明治期から大正期、昭和期と多くの修身書が改訂版も合わせて多くあるため、朝鮮版の異同調査にとどまった。だが、訂正前版と訂正版と収集できたものについてはこれを行えるが、訂正版のみの資料については異同調査ができないことから、冊数はかなりの数になるものの、異同調査については限定的なものにならざるをえなかった。異同調査項目としては、誤植の訂正、句読点の有無、句の削減と追加、助詞や仮名遣いの異同を見、これらにどれほどの重要度があるかを検討してみた。4)平成23年度は複写資料インクの消滅が顕著であったため、大容量のPDF化作業に伴う物品の購入が必要となった。そのため韓国での収集は行わず、国会図書館において国内刊行の朝鮮教育資料の複写を行った.5)研究サイト「近代日本と韓国・朝鮮半島」(http://swjc.saga-wjc.ac.jp/~nagasawa/)では、これまで収集してきた資料及びテキスト化した教科書を継続公開している。
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