○年号改元文献の書誌調査を次の所蔵機関にて行った(宮内庁書陵部、国立歴史民俗博物館、東京大学史料編纂所、京都御所東山御文庫)。とくに宮内庁書陵部蔵『改元部類記』(415-278)は三条西公条筆にかかる古写本であり、他の写本の祖本と目され、鎌倉・南北朝時代の改元定についての基礎史料となる善本であることが分かった。翻刻など今後の研究対象としたい。 ○中世武家政権が改元に干渉した事例について、公武関係史の視点から研究を進め、とくに南北朝時代の事例を新しい史料を基に考察し、「太平記と公家政権」以下の論文を執筆して公刊した。 ○7月には『文淵閣四庫全書』電子版(原文・全文検索版)を購入した。これによって年号改元文献に引用される厖大な漢籍の出典を検索することが容易となり、また逸文の発見・吟味のための基盤を得た。 ○上と関連して、康安から応永にいたる「改元別記」を一つの柱とする東坊城秀長の日記『迎陽記』についての研究を進め、刊行の準備段階に入った。日本漢籍史を専門とする研究協力者(山田尚子)と数度の研究打合せを行い、10月22日には編集者を交えて『迎陽記』を八木書店の史料纂集の一点として刊行することを決定した。
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