ほぼ、年度当初に申請した計画を実行できた。日本漢文学を専攻する研究協力者(1名、山田尚子)と二度にわたり研究打合せと調査を行っている。 (1)改元部類記・儀式書の基礎的考察 前年度に引き続いて、宮内庁書陵部・国文学研究資料館・東京大学史料編纂所などに所蔵される旧公家蔵書を中心に文献資料調査を行い、重要なものについては紙焼写真を購入した。 (2)史料纂集『迎陽記』の刊行準備 中世の年号制定の実態をよく明らかにしているのが、儒者東坊城秀長(1338-1411)の日記『迎陽記』である。本書の初めての活字本刊行準備を進めて、2010年2月に原稿をる入稿することができた。現在校正中である。 (3)中世の年号制定手続きの復元 前年度に引き続いて、室町時代以前のありかたを復元すべく、洞院実熈(1409-1459)の編纂した儀式書『行類抄』改元部に焦点を当て研究した。その成果の一部を「部類記と類題集-書物の形態から」として慶應義塾大学国文学研究会(2009.7.11)で発表した。 (4)年号の反切についての研究年号の二字から反切をとり、その音からある一文字の漢字を導き出して吉凶を問題とすることがよく見られ、これは音韻についての当時の考え方を反映している。この点に着目して年号改元文献の分析を進めて、著書『中世の書物と学問』、論文「足利義満の時代-政治と文化」等を執筆公表した。これによって年号音読に関する史料を中世の文字学・音韻学研究にも活用できることを示した。
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