研究概要 |
A:「クルックシャンクにおけるホガース模倣」 ポールソンの先行研究に異説を唱え、クルックシャンクはホガースに始まる英国の諷刺喜劇の図像的伝統に終焉をもたらした挿絵画家ではなく、ホガース的なエンブレム図像の正統な継承者の1人であるということを論証した。 B:「クルックシャンクの連作版画『酒瓶』(The Bottle,1847)の社会文化史的解明」 禁酒主義の思想を体現する『酒瓶』で用いられたのは「蝋刻電鋳版画」(glyphography)という版画媒体だった。精密さという点で銅版画よりも劣るこの方式をクルックシャンクが敢えて採用した理由は、安価な版画を直接労働者階級に届けるためである。労働者階級における飲酒の悪弊を根絶しようとした絶対禁酒主義者(teetotalist)としてのクルックシャンクの目論見がこの版画媒体を選択させたのである。
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