研究初年度なので、今までの研究の総まとめ・発表と、本研究への橋渡し的作業・分析にカをいれた。ここ数年間、音楽と文学の対位法的関係を分析し、さらに、これら2つの芸術分野の交わりが、社会とどんな相互影響関係にあるのかという通時的研究に力を入れてきた。2008年度は、この通時的研究を一度完成させ、今度は共時的分析へと移行していく過渡期にあたった。まず、これまでの研究の総まとめ・発表は、本研究の土台となる研究書TheInfluence of Music on American Literature Since 1890: A History of Counter-pointの完成とアメリカでの出版という形で行った。また、アメリカだけでなぐ日本でも、日本英文学会第80回全国大会や筑波英語教育学会第28回大会などを通して、その成果を口頭で発表し、さらに大会Proceedingsや紀要の特別研究発表報告という形で、文書での報告も行った。上記の研究書の出版や学会での口頭発表は、本研究への大切な準備となっている。実際、前研究で重点的に扱ったT. S. EliotやVladimir Nabokovといった作家の作品は、本研究でも重要な分析対象となっている。新たに研究対象となる作家や作品のうち、Jean RhysとLawrence Durrellについては、夏季休業を利用して、Washington D.C.のLibrary of Congressで日本では手に入りにくい資料収集を行ってきた。今現在は、それらの資料やその他の文献の読み込みや分析を着々と進めている段階である。これらの成果は、2009年度にアメリ力の査読付ジャーナルからの論文出版という形で発表していきたいと思っている。
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