前年度は、それまで取り組んできた音楽・文学の2つの芸術分野の交わりが社会とどんな相互影響関係にあるのかという通時的研究の総まとめとして、The Influence of Music on American Literature Since 1890 : A History of Aesthetic Counterpointをアメリカで出版した。今年度は、そこからさらに、「モダニスト四重奏文学の共時的分析」へと的を絞って研究を続け、その成果として、"Transition from Modernist to Postmodernist Quartets : Lawrence Durrell's and Vladimir Nabokov's Musico-Literary Quartets"と、"Democracy Realized through Music and Its Collaboration with Literature"という2本の論文が、アメリカの学術誌の査読に合格した。前者が、今進めている研究の最も中心となる議論の1つとして重要である一方、後者は、"Arts of Democracy"というテーマの特集号への投稿で、「芸術と社会との相互関係」という人文系の研究者全員にとって重要なテーマを土台にしつつ自分の研究対象について議論を展開したという点で意義があったのではないかと思う。また、Washington D.C.のLibrary of Congressで資料収集を行うなど、来年度以降に向けて引き続き研究を進めている。さらに、年度末の3月末には、「モダニスト四重奏文学の共時的分析」の基盤となっている、「4をめぐる世界観」という講演を担当し、古代ギリシャのPythagorasやEmpedocles以来、「4」という数と「世界観」が、文学や音楽をはじめ、様々な学問の中でどんな関係を結んできたかという活発な議論を研究者や大学院生と行った。
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