論文については、前年度から取り組んでアメリカの学術誌Soundings : AN Interdisciplinary Journalの査読に合格した"Delmocracy Realized through Music and Its Collaboration with Literature"を仕上げて出版した。これは、「芸術と社会との相互関係」についての特集号であったため、私の研究課題「モダニスト四重奏文学の共時的分析」の大きな土台・枠組みである「音楽と文学との絡み合い、さらに、この姉妹芸術と社会との絡み合い」への考察を深める重要なきっかけとなった。また、この研究課題で扱う作家のうち、前年度にアメリカで出版した論文"Transition from Modernist to Postmodernist Quartets : Lawrence Durrell's and Vladimir Nabokov's Musico-Literary Quartets"の中で注目したDurrellに引き続き焦点を当てながら分析を進めた。実際、New Orleansで開催されたInternational Lawrence Durrell Society Conferenceでの発表"Lawrence Durrell's Alexandria in the Discursive Stmcture of 'One and Four"'はその成果である。この発表では、モダニスト四重奏文学の代表的作品の一つであるDurrellのThe Alexandria Quartetが、C.G.Jungの展開する"One and Four"という考えと関連付けることで効果的に解釈されうると主張した。発表会場での質疑応答や意見交換、また、後日日本に送っていただいた貴重なコピー資料などに刺激を受け、現在その時の発表を発展させて論文にしている最中である。
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