今まで同様、研究を進めながら海外の査読誌からの出版を少しずつ実現していくという当初の計画通り、平成23年度は、アメリカの学術誌Notes on Contemporary Literatureの査読に合格した"'How Can Everything Come from Four Simple Bases?': Perceptions of the World through Richard Powers's The Gold Bug Variations"を仕上げて出版した。この論文では、現代アメリカ作家のRichard Powersが、「世界は4でできている」というテーマを基に、どのようにしてThe Gold Bug Variationsという長編小説を組み立てているのかという点を分析している。そして、その世界観が、古代ギリシャのピタゴラスやエンペドクレス以来の宇宙観・世界観を反映しつつ、DNAの4つの塩基のイメージにまでつながっているという視点が、私自身の研究課題「モダニスト四重奏文学の共時的分析」の大きな土台・枠組みにも重なっているという点で、重要な位置を占めている。また、この土台・枠組み、あるいは全体の見取り図的な歴史の流れについては、総合科目の授業でも、「4にまつわる宇宙観・世界観」というテーマで数回にわたって連続した講義を行い、その準備や学生からの反応の中で、要点を整理する貴重な機会を得ることができた。さらに、次年度の査読挑戦に向けて、Jean Rhysの作品研究を進めている。
|