今年度は、アメリカ合衆国イェール大学での本課題に関しての研究の機会を得て、4月より半年間海外研修を行った。研修期間中、イェール大学の豊富な資料を駆使して、アフリカ系アメリカ人、およびメキシコ系アメリカ人の移動やディアスポラの問題についての資料研究を行い、2つの論文を完成させた。ひとつは、先年度より執筆しているAnna CastiilloのThe Mixquiahuala Lettersについての、"The Mixquiahuala Letters and Epistolarity : Across the Border"であり、国境(Border)についての資料をさらに検討し、論文に付け加えた。この論文は学会での発表を検討中である。ついで、これも先年度より研究しているAmerican Colonization SocietyについてWashingtonの国会図書館における資料調査も含めて、問題を検討し、その議論を中心にCaryl PhillipsのCrossing the Riverについての論文、"Crossing and Letters"も完成させた。後者は本課題の最終年度となる22年に開催する国際シンポジウムにおいて発表する予定である。なお、作者Caryl Phillips氏は現在イェール大学で教えており、機会を得てインタビューを行うことができた。 Migrating Wordsと名付けたこのシンポジウムについては、イェール大学で本研究者の指導教員となったウイ・チー・ディモック(Wai Chee Dimock)教授に協力を要請し、基調講演者としての参加許諾を得、シンポジウムの内容について議論、打ち合わせを行った。この他、書簡一般に関して、資料収集、および資料の検討をおこなった。また、アメリカ研修の最後には、インディアナ州のパデュー大学アメリカン・スタディーズ教室の招きを受けて、一日、「日本におけるアメリカ文学受容」という題で大学院の授業を行った。 帰国後はさらに海外協力研究者であるヨーロッパの2名の研究者とシンポジウムについて連絡・打ち合わせを行い、日本よりの本研究者以外の2名とあわせて、計6名の参加者で行うという概略を決め、22年6月の実施に向けて準備に動き出している(webページ参考)。
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