最終年度となる今年度は、計画に従って国際シンポジウムを開催した。2010年6月12日、千葉大学においてMigrating Wordsという題のもと、アメリカ合衆国、イェール大学よりWai Chee Dimock教授を基調講演者として招いた。Dimock教授が日本で講演を行ったのは、これが初めてである。その他フィンランド、トゥルク大学のPirjo Ahokas教授、ポーランド、ウッジ大学のJadwiga Maszewska教授の2名の海外協力研究者を、講演者として招待した。国内からは、余田真也和光大学教授、Myles Chilton千葉大学助教授を招き、そして本研究者が、コーディネーター兼講演者として出席した。それぞれが、アメリガの移民文学を中心に、移動する言語という主題のもと、意欲的な発表を行い、最後に質疑応答を行った。このシンポジウムの、基調講演をのぞく発表原稿は、シンポジウムホームページのProceedingsに掲載されている。本研究者は、"Crossing and Letters:Caryl Phillips's Crossing the River"という、「中間航路」と手紙の関係を論じた講演をおこない、この発表原稿の基となっだ論文の全文は、千葉大学文学部紀要に掲載した。 この他の出版物としては、ハイチ系アメリカ人作家、Edwidge Danticatの作品について、音声による手紙を論じた論文「『息、眼、記憶』と「声」の手紙」を、発表した。 また、2011年1月には、ハワイにおいて開催されたInternational Conference on Arts and Humanitiesに出席し、Epistolarity and Border Crossing in Ana Castillo's The Mixquiahuala Lettersという口頭発表を行った。これはメキシコ系アメリカ人作家Ana Castilloの作品についての、border crossingと書簡体小説の関係を論じたすでに完成している論文に基づくものである。 2001年3月には、英国サセックス大学主催で開かれた手紙と葉書の文化・文学的意味を議論する学会、Picture This:Postcards and Lettersに出席した。この学会のことを知ったのが遅く、発表申し込みはできなかったが、セッションやワークショップに参加し、研究交流を行った。
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