本研究の目的は、アメリカ合衆国において、いわゆる「<9・11>以降」と呼ばれる状况のなか、そのような社会経済政治構造の変化を重要な文脈と見なしつつ、現代アメリカ演劇がどのような展開を見せているのかを実践歯・理論的水準で把捉することにある。初年度の平成20年度においては、「<9・11>以降の現代アメリカ演劇の実態の把握」という観点から、ニューヨークとロスアンジェルスという東海岸と西海岸の演劇の拠点都市と、アメリカ合衆国各地に存在するリージョナル・シアターにおける演劇実践を具体的な研究対象とし、該当する演劇についての基本図書、すなわち現代アメリカ演劇関係の研究書や演劇を扱ったさまざまな雑資料(新聞、大衆雑誌を含めた諸雑誌)の収集を開始した。また、本研究のもう一つの重要なテーマである「<9・11>以降」をめぐる欧米ならびに日本における思想状況を把握するため、多様な学問領域における基本図書を収集・通読した。その場合、批評理論にかかわる諸文献ポスト構造主義、フェミニズム、ポストコロニアリズム、カルチュラル・スタディーズ等々と、テロリズムやグローバリゼーションをめぐる思想・哲学系の書物が資料収集の中心となった。さらに、演劇の場合、活字メディアだけを見ても、そこから得られるものは限られることが想定されるので、活字メディア以外の演劇実践に関係する映像資料も可能なかぎり収集した。また、京都造形芸術大学付属舞台芸術研究センターに出張して、センターの関係者と研究についての打ち合わせを行うこともできた。こうして収集した資料はかなり膨大な量になると考えられるので、パーソナル・コンピュータを用いてその資料の整理を行なった。本研究の初年度における成果については、次年度以降に学術論文として発表する予定だが、同時に、国内外での学会発表も視野に入れている
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