今年度も引き続き、「〈9・11〉以降の現代アメリカ演劇の実態の把握」という観点から、ニューヨークとロスアンジェルスという東海岸と西海岸の演劇の拠点都市と、アメリカ合衆国各地に存在するリージョナル・シアターにおける演劇実践を具体的な研究対象とし、該当する演劇についての基本図書、すなわち現代アメリカ演劇関係の研究書や演劇を扱ったさまざまな雑資料(新聞、大衆雑誌を含めた諸雑誌)の収集を継続的に行った。また、本研究のもう一つの重要なテーマである「〈9・11〉以降」をめぐる欧米ならびに日本における思想状況を把握するため、多様な学問領域における基本図書を収集・通読した。その際、批評理論にかかわる諸文献-ポスト構造主義、フェミニズム、ポストコロニアリズム、カルチュラル・スタディーズ等々-と、テロリズムやグローバリゼーションをめぐる思想・哲学系の書物が資料収集の中心となった。さらに、演劇の場合、活字メディアだけを見ても、そこから得られるものは限られることが想定されるので、活字メディア以外の演劇実践に関係する映像資料も可能なかぎり収集することになった。研究代表者は、当該年度中に資料収集と研究内容のレビューのため、短期間渡米する計画を立てていたが、ミネアポリスにある全米劇作家協会へ出張し、資料と情報の収集をすることができた。長期的に共同研究を考えている京都造形芸術大学付属舞台芸術研究センターとは、センターの関係者と研究についての打ち合わせを頻繁に行い、今後の共同研究の方向について活発な議論をかわした。
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