①英国リベラリズムの政治文化については、ブルームズベリー・グループの政治文化と対立しながらも密接に連動するF・R・リーヴィスの少数文化論およびオルダス・ハクスリーのディストピア小説『すばらしい新世界』を、現在につながるネオリベラリズムとアソシエーションとの関係で、再吟味した。これは、「帝国、インターナショナリズム、グローバリズム――英国フォーディズムのディストピア、あるいは、『すばらしい新世界』のエコノミー」『文学研究のマニフェスト――ポスト理論・歴史主義の英米文学批評入門』所収として発表した。 ②英国ヘリテージ映画の再考について、『ポスト・ヘリテージ映画2』出版の準備を上智大学での研究会を通じてさらに進め、原稿「TVブロンドのお仕事と『スライディング・ドア』――ニュー・レイバー・ファンタジーが表象する雇用のエコノミー」を執筆した。また、スピンオフとして、河島伸子・大田信良ほか編『イギリス映画と文化政策――ブレア政権以降のポリティカル・エコノミー』を出版した。 現代の映画・映像文化のプラットフォームあるいは流通・配給の物質的な基盤となる英国のメディア・教育産業のリサーチの必要を感じたため、大英図書館だけでなく、BBCのTelevision CentreおよびArchive Centreを調査し、さらに、ウォリック大学英語教育センターのPeter Brown氏との意見交換も行った。 ③英米批評理論の歴史化の作業については、T. S. Eliotの文化論・批評を、90年代のカルチュラル・スタディーズや文化政策学における受容や成果を踏まえたうえで、英国福祉社会やアメリカ冷戦イデオロギーとの関係において歴史化した。この成果については、日本エリオット協会において、「エリオットの文化論とクリエイティヴ産業――1990年代英国カルチュラル・スタディーズ/文化政策学のあとで」として講演した。
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