本研究の目的は、ポストインペリアル英国文化、すなわち、脱植民地化の動きに伴う20世紀全般にまたがる英国の政治および文学・文化の総体を、明らかにすることにある。1920年代を中心とする狭義のモダニズム文学、戦間期に再編制される国民文化、50年代の文化研究といった、英国20世紀前半50年の時間的・空間的範囲をさらに拡張して、現在ますます顕著となる文化のグローバル化と新たな帝国主義のさまざまな関係性を解釈する。 具体的には、研究対象である英米両国の拡張主義的な文化空間に繰り広げられる長い20世紀を、以下の3つの研究主題領域に区分し、ポストインペリアル英国文化の全体像を把握する。 (1)グローバル化や多文化主義といったポストインペリアルな政治文化を特徴づける、英国のリベラリズム・社会主義の文学や社会思想、および、植民地文学。 (2)80年代サッチャリズム以降の英国文化の代表的な文化的生産物としてのヘリテージ映画とそのグローバルなコンテクストとしての米国ハリウッド映画産業。 (3)Raymond Williamsらによる50年代英国の文化研究に対して人種や帝国主義の観点から批判あるいは発展させたカルチュラル・スタディーズ、および、それらに批判的に反応・連動してきた英米のポスト構造主義以降の批評理論。
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