研究課題
本研究は、19世紀のアメリカ文学における写真の多様な特性に焦点を当て、各作家の写真の受容形態、あるいは写真が作品内に担う役割について考察し、視覚文化の視座から文学解釈を試みることを目的としている。本年度は南北戦争以後の作家を主として取り扱い、Henry Jamesといった南北戦争以後の作家にみる写真の受容形態及び、作家が写真の多面的特性(科学性、大量複製性など)からどのような影響を受け、それが作家の執筆行為や描写手法、作品のスタイルにどのように反映されているかを考察した。具体的にはモノメディアとしてのダゲレオタイプとマスメディアとしての写真の関係や、写真の文化史の視点から初期資本主義にあり方を考察し、8月~9月にかけては約2週間、ロンドン大学図書館を中心に一次資料収集ならびに論文執筆に従事した。研究成果としては「消失する銀板写真と複製される写真-ジェイムズの美学と現実の感覚-」が『中・四国アメリカ文学研究』第46号に掲載された。また、日本ナサニエル・ホーソーン協会関西支部例会にて「Henry Jamesの芸術感覚と時代認識-写真、広告、消費」と題して研究発表を行ない、19世紀後半の大量消費社会における写真と商品文化と芸術とのあり方について考察した。その他、9月に「Henry Jamesの戦争体験-刻印された身体と動揺するアイデンティティ」と題して中・四国アメリカ文学会秋季研究会にて研究発表を行ない、2011年1月に(共著)『英米文学と戦争の断層』(関西大学出版部)が出版された。加えて、ユダヤ文学の映画論を『シュレミール』No.11に執筆した。
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I'NEXUS
巻: No.4 ページ: 54-58
シュレミール
巻: No.10 ページ: 86-90
中・四国アメリカ文学研究
巻: 第46号 ページ: 1-10