研究概要 |
本年度は、研究実施計画に従って、18世紀イギリスにおけるアフリカ系作家と奴隷制度問題の全体像を把握しつつ、未収集のものを中心に資料収集をおこなった。一次資料のうち、Edward LongやIgnatius Sancho等の文献をBritish Libraryに赴いて調査した。また、二次資料としては、Susan Dwyer Amussen, Caribbean Exchanges: Slavery and the Transformation of English Society, 1640-1700 (U of North Carolina P, 2007)等の最新かつ重要な関連文献のうち未収集のものを中心に収集した。 このようにして収集した資料を整理・分析した研究成果の一部は、以下のようにして発表された。西インド諸島の植民地と黒人奴隷を主題とする2つの戯曲Richard Cumberland, The West Indian (1771)とGeorge Colman, Inkle and Yarico (1787)を論じた最新の重要論文Jean Marsden, "Performing the West Indies: Comedy, Feeling, and British Identity," Comparative Drama 42 (2008): 73-88について、第30回スチュアート朝研究会(2008年12月29日、専修大学)において、これまでの研究から得られた知見に基づいて批評的に解題した。また、「色をつけないこと-フランシス・ウィリアムズ問題」(『外国語研究』第42号)においては、自意識を持って文学作品を創作することのできた最初の黒人作家とも言えるFrancis Williamが残した詩と彼の人種に対する態度について、彼の人物像と詩が紹介された奴隷貿易擁護論者として悪名高いEdward Longの著作The History of Jamaicaとの関連をふまえて論じた。
|