研究概要 |
本年度は、研究実施計画に従って、18世紀イギリスにおけるアフリカ系作家と奴隷制度問題について、昨年度までの実績を発展させて、引き続き個別の作家・作品への詳細な分析研究を行った。一次資料に関しての調査として、British Libraryにおいて、Olaudah Equiano関連の文献調査と並行して、18世紀に繰り返し翻案されて流通した"Inkle and Yarico"の物語群や、奴隷貿易廃止運動のセンティメントを表現した重要な作品であるThomas Day and John Bicknellの長編詩The Dying Negro等の書誌および原典の調査をおこなった。また、二次資料としては、Robin Blackburn,The Making of New World Slavery(Verso,2010)等の最新かつ未収集のものを中心に収集した。 このようにして収集・調査された資料を分析した今年度の研究成果は以下の通りである。まず、昨年度からの引き続きの研究成果として、論文「イグネイシアス・サンチョの静かな生活(日本ジョンソン協会編『十八世紀イギリス文学研究』第4号所収、開拓社、2010)が刊行された。Olaudah Equianoのアフリカ・ルーツに関連して、彼のイボ語表記に潜むアフリカ系作家の二重意識を明らかにした論文「"Olaudah Equiano"の発音表記について-イボ語・英語・二重意識-」(安武知子他編『ことばとコミュニケーションのフォーラム』所収、開拓社,2011)が刊行された。また、本年度の成果うち、Olaudah Equianoと"Inkle and Yarico"物語群およびThe Dying Negroに関連する考察は、日本ジョンソン協会第44回大会(2011年5月23日)のシンポジウム「涙と冒険のカリブ-西インド諸島と18世紀英文学の諸相」において発表される予定である。
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