研究概要 |
コンピュータを利用し、『カンタベリー物語』について、2つの代表的な写本と2つの代表的な刊本を取り上げ、4つのテクストを対応させたコンコーダンスを作成するために、平成22年度には、当該作品の韻文作品全て(Monk, Nun's Priest, Manciple, Man of Law, Second Nun, Physician, Pardoner, Shipman, Prioress, Sir Thopas,等)について、2写本のコレーション・コンコーダンスを作成した。7月に開催されたイタリア、シエナでの新チョーサー学会において、研究成果の一端を発表した。そこでは2写本間のvirguleの行位置の違い、midtailの文字及び語の文字列位置での違い、そして過去分詞の接頭辞y(i)-の有無について、統計学的に明らかにした。Hengwrt写本の方がEllesmere写本よりもvirguleが多く、しかも位置に偏りがあることが検証できた。過去分詞接頭辞ついては、既に電子化ずみの刊本(Blake版及びBenson版)の情報も加え考察した。Ellesmereの方が接頭辞が多用されていること、また刊本では写本に無いにも拘わらず韻律パタンに合わせるため、かなりの編集を加えていることが明らかにされた。 この研究成果に関して、アメリカ、ペンシルヴァニア大学のDavid Wallace教授と意見交換した。 散文作品であるMelibeeとParson's Taleについては、2写本の電子化の作業を終えた。コレーションするために必要となる写本の行の分節の仕方についても方針を決めた。
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