本研究の目的は、アイルランド文学の主要な伝統をなすものの旧弊だとみなされてきたビッグ・ハウス文学を見直して、正当な評価と文学的地位を与えることである。そこで現代作家エリザベス・ボウエン、モリー・キーン、ウィリアム・トレヴァー、ジョン・バンヴィルの作品をフェミニズム、表象、精神分析、物語論、ポストモダニズム等の現代批評で分析し、個々の革新性を実証した。また、ボウエンやキーン、トレヴァーが19世以来の伝統を継承しつつモダニティを加えていくのに対し、バンヴィルはこの伝統に挑み、慣習を打破することによって再生をはかろうとすることが判明した。
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