研究概要 |
1.18,19世紀イングランドにおける結婚法(主にハードウィック結婚法とリンドハースト結婚法改正案)制定過程を確認するために、夏、春期休暇を利用して、ロンドンのブリティッシュ・ライブラリで一次史料の収集を行った。またヴィクトリア朝において結婚の問題とは切っても切り離せない密接な関係にある相続の問題を考察するにあたり、保険についての一次史料収集を、春期休暇を利用して京都大学経済学部の図書館で行った。 2.トマス・バーディの『カースタブリッジの町長』を、結婚、相続、私生児の観点から読み直すことにより、従来見逃されてきた語りの空白の問題及び、ヒロインであるエリザベス=ジェインと、そのダブルとしてのルセッタとの関係性に新しい解釈を見出した。また論文の構成、内容について、Sussex大学のLindsay Smith教授と意見交換を行った。 3.3の新解釈については、2008年11月1日に金沢で開催された日本バーディ協会において発表し、フロアから多くの貴重な意見を得ることができた。 4.結婚法における「身内化」のイデオロギーの分析を目的とする本研究において、元来は「他者」であるはずの妻の身内化を構造的に支える絶対的他者として、「売春婦」の存在は見逃せない。Judith WalkowitzのProstitution and Victorian Societyは、ヴィクトリア朝における売春婦の研究の金字塔とも言うべき名著であり、当研究の理論的精緻化を目指すうえで指針とすべき最重要研究のひとつとして、ブリティッシュ・ライブラリでの調査研究をまじえつつ、全訳を試みた。なお出版は2009年5月の予定である。
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