本年度は、夏期休暇期間中、カリフォルニア大学バークレー校及びデイヴィス校の図書館が所蔵するオニール関連書籍を利用してオニール後期の傑作The Iceman Comethについての研究を集中的に行なった。背景知識を増すために、作品論の他に数多くの二次的文献にも当たった。その多くは、マルクス、ニーチェ、ニヒリズム等、当時広く流布していた思想に関する文献と、The Iceman Comethと比較して論じられることの多いIbsenのThe Wild Duck及びGorkyのThe Lower Depthsに関する文献である。その他、オニールが愛読した各国の先輩作家の作品についても現在、可能な限り広く通読を進めている。バークレーに程近いタオハウス付属資料室からは、オニールの所蔵書籍リストを入手することができたので、特にオニールの東洋思想についての知識がどの程度のものであったのかを推定する上で今後の研究に役立てていく。The Iceman Comethについては、さらに資料に当たって思考を練りながら、作品論として言語化してく予定である。 また、今年度はオニール初期の代表作"Anna Christie"についての英文論文を公表した。私のオニール研究では、中期作品の研究が比較的手薄なので、その点に留意しつつ、今後の研究を進めていく予定である。
|