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2009 年度 実績報告書

小説に投影された大英帝国の不安-19世紀末から20世紀初頭の英国小説をめぐって

研究課題

研究課題/領域番号 20520247
研究機関東京理科大学

研究代表者

松本 和子  東京理科大学, 工学部, 准教授 (90385542)

キーワード英米文学
研究概要

研究活動の二年目にあたる平成21年度は、主として個人に注目した前年度の研究実績を踏まえ、個人を取り囲む環境に視野を広げ両者の相関関係から19世紀後半から20世紀初頭にかけての不安に考察を加えることを試みた。考察の結果は論文の体裁を整え大学機関誌に投稿、2010年3月に刊行された。
論文で取り上げたJoseph Conrad作An Outpost of Progressはコンゴに派遣された二人のベルギー人駐在員が極度の不安から精神を荒廃させ死にいたる過程を描いている。当該論文では脇役に着目し、彼らの背後にある帝国主義を前景化した内容を提示した。敢えて主人公から視点をずらしたアプローチの意義は、二人を追い込んだ要因が彼らの精神的脆弱さのみならず本社幹部たちに体現される弱肉強食に基づく帝国主義のロジックだと跡付けられた点に求められる。奥地に文明の光をもたらす使者という彼らの自負は、無能な社員は切り捨て効率よい植民地経営を意図する会社にしてみれば単なる幻想であり、見捨てられたのではないかという二人の不安は最初から織り込みずみのシナリオだったことが考察から明らかになった。1.帝国主義に地盤をもつ強国の論理の前に一個人の存在は無力であること2.植民地経営の勝ち組とも言えるヨーロッパ列強の中にあっても帝国主義の名のもとに犠牲者に転じる人々がいること 3.2.が生みだす自己矛盾の拡大が帝国崩壊に影響を及ぼしていること の三点が小説から浮き彫りになった点に研究の重要性があると考える。
論文執筆とは別に、日本英文学会発表用資料作成の一環として研究対象期に欧米で流行したfuture illustrationを題材に1.一般向け論考を学内誌教養講座欄に掲載2.学内研究部門フォーラムでのポスター発表を行った。どちらも一見希望に満ちたfuture illustrationのネガティブな要素を指摘した内容であり、洞察力に富んだ画家は、万事順調と感じられた経済・国力発展期であっても停滞・衰退期の訪れを予期し作品に投影していたことを示した点に意義と重要性をこめた。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2010 2009

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 『進歩の前哨基地』における脇役の機能-駐在員の死をめぐって-2010

    • 著者名/発表者名
      松本和子
    • 雑誌名

      東京理科大学紀要 教養篇 第42号

      ページ: 173-192

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 未来図から読み取る100年前の想像力-未来図は明るい?-2009

    • 著者名/発表者名
      松本和子
    • 雑誌名

      東京理科大学科学教養誌『科学フォーラム』 300号

      ページ: 28-33

  • [学会発表] 100年前の想像力-未来画にみる夢と不安2010

    • 著者名/発表者名
      松本和子
    • 学会等名
      東京理科大学総合研究機構 神楽坂・人・未来研究部門
    • 発表場所
      森戸記念館
    • 年月日
      2010-03-10

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公開日: 2011-06-16   更新日: 2016-04-21  

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