研究概要 |
2008(平成20)年度においては、ケンブリッジ大学におけるGabriel HarveyとEdmund SpenserのEarl of Leicesterを巡る関係を踏まえた上で、Edward ForcetのPedantiusやThomas Nashe vs. Harvey論争を扱い、大学での友人・敵対関係が、どのような形でロンドンでのHarvey批判につながっていったのかをケンブリッジ大学古文書館にて調査した。その結果、Pedantiusの政治性がプロテスタント武闘派との関連で浮き彫りになってきたという成果は大きい。この点については稿を起こして論文に纏める予定である。また、Nathaniel Woodesの作品について、彼が大学時代にどのような人脈を築き、その人脈を基にしてノリッジで市長や地方有力者の庇護下でどのような演劇活動を行っていたのかを明らかにした。この成果を得るために、ノリッジのノーフォーク記録保管所に残されている市議会記録、及び教区記録などを再調査した。その成果は、"Nathaniel Wooodes, Foxeian Martyrology, and the Radical Protestants of Norwich in the1570s," Reformation13(2008)として発表された。ReformationはTyndale Societyの国際ジャーナルであり、John N.Kingが編集長を務め、Andrew Hadfield, Patrick Collinsonなどの碩学がreaderを務める歴史・神学・文学のinterdisciplinaryな雑誌である。この論文によって、大学が地方演劇と緊密な関係性をもっていたことだけでなく、大学演劇から商業演劇への展開について新しい事実を公表できたことは、イギリス演劇研究史上重要なことだと思われる。
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