平成23年度において実施した研究の成果は以下の通りである。 (1)ケンブリッジとオクスフォードの大学出身学生が執筆した演劇や散文を主な史料として用いながらロンドンにおいて彼らが職業劇団に関わり、都市文化を変えていく様子を論文として纏め、『ロンドン物語:メトロポリスを巡るイギリス文学の700年』の一章として発表した。 (2)ノリッジにあるノーフォーク記録文書館において史料を調査した。とりわけ地方都市と学寮との密接な関係だけでなく、人物同士の関係をも解明することのできる1570年代のケンブリッジ大学史料についての考察を行い、現在、論文に纏めている。 (3)ロンドンの商業演劇を保護していた枢密院顧問官や枢密院の議事録について調査を行うとともに、二次文献の渉猟を行い、とりわけ枢密院と強い関係があったことで知られる劇作家たちが、どのように大学演劇文化の商業演劇的展開に関わったかを考察した。事例研究を通して枢密院庇護の一つの実態を明らかにする論文を執筆し、その成果を学会論文集に発表の予定である。
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