本研究は、アメリカ独立革命期の建国神話がいかに構築され、それが共和政期および、その後の南北戦争以前期(文学史上のアメリカ・ルネサンス期と重なる)の文化の中で、いかに表象され、受容されてきたのかを考察するものであり、今年度は、その4年目の完成年度にあたる。 平成23年には、まず、(1)Stephen Burroughsの『回想録』を、独立革命の精神を反映する体制反逆とその後の権威獲得過程の視点から分析し、(2)アメリカ独立宣言および憲法の精神を順守せんとする北部奴隷廃止論者たちの主張を反映したルイザ・メイ・オルコットの奴隷反乱物語に関しての論文を執筆し、(3)アメリカで最も人気が高い大衆文学の一つであるマーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』のパロディ、アリス・ランダルの『風は去っちまった』を巡る憲法修正第一条、表現の自由を争点とした、検閲と表象の有り方についての口頭発表を行った。その折の論考は、加筆改変され、後日、共著執筆による書籍として出版された。また、(4)クーパーの『パイロット』を、海洋ロマンス群の一部とし、独立革命期以降のアメリカの歴史状況を踏まえて分析した論考も、本年度実績に加わったことを書き添えておく。クーパーの他作品The Red Rover、Homeward Bound、Home as Found Water-Witchについては、引き続き考察中である。なお、上記以外にも、アメリカ社会と文化を解説するコラム「詐欺師」を執筆(出版は、H24秋となる予定)し、その中で、アバネイルからウェイルをへて、バロウズへと時間を遡及して詐欺師の系譜をたどり、アメリカにおける体制転覆精神の体現者「詐欺師」の起源と大衆的娯楽の文化構築を本研究に関連づけた。
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