ロマン主義文学を、ヨーロッパ帝国支配、植民地支配との関わりの中で捉えることによって、1770年から1830年の間に書かれた文学、批評書、この間になされた講演の再評価を行った。ロマン主義の時代において、ヨーロッパの植民地支配が物質的にもイデオロギー上においても劇的な変化を遂げることに注目し、18・19世紀イギリス帝国支配の新しいシステムによって強力に形成されつつあった科学的知の体系を、ロマン派文学がどのように取り込み、またそれに対峙したのかを明らかにするために調査、研究を進めた。 最初に、『進化論』を著したCharles Darwinの祖父であり植物学者、発明家にして詩人のErasmus Darwinの詩作品、The Botanic Garden(1789-91)を詳細に読み解くことを通して、彼が成した文学と科学的探究の融合という一つの新しい視座が、Blake、Coleridge、Wordsworth、Shelley CircleやEleanor Anne Pordenといった広範なロマン主義文学者に与えた影響を分析し、研究会で発表の後、論文に纏めた。 さらに、帝国の植民地支配と平行して行われた、Cook、Banks、Barrow、Darwin、Jonesらに代表される地球規模の科学的探究が、ロマン主義の時代の知識の根幹を成す重要な要素であることを示し、その上でロマン主義が帝国の問題と科学的知識に対してどのように向き合い、昇華させていったかを明らかにすべく研究を進めた。
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